「健康エイジング」の勧め Vol. 1

痛みなく老後を楽しめる人と、怪我や痛みに悩まされてしまう人の差は?

 人生100 年時代という言葉をよく耳にしますね。日本人の平均寿命は女性約87 歳、男性約81 歳という統計データが出ています(2018 年現在)。もっともこの数字は体の弱い赤ん坊や子供の時に亡くなってしまう人も含みますから、私を含めすでに大人になっている我々は統計上もっと長生きするということになります。

それにともない個人のレベルでも「いかに歳を重ねていくか」ということを考える機会が増えてきたのではないでしょうか? 医療の立場からも、病気にならず健康的に歳を重ねることを追求していくという予防医療の取り組みに注目が集まっています。私の専門分野である運動機能の側面からみても、 歳を重ねても趣味や旅行を楽しみたい、ゴルフなど末長くスポーツを楽しみたいなど、遊びが出来る「健康エイジング」をいかに追求していくかというのが非常に重要なトピックスになってきていると感じています。せっかく長生きはしたけれど、足腰が痛く歩くこともままならないとなってしまっては悲しいですよね。

 私のクリニックには様々な症状を抱えた幅広い年齢層のクライエントが訪れます。例えば腰痛や首肩痛、ひざ痛などを患っている方が多いですが、「歳だからしょうがない」、「歳をとれば皆痛みは持っている」、「歳だからガタがくる」、「若い時は色々できたのに歳だからしょうがない」などなど、あたかも年齢のみが原因となっていると考えるクライエントも多いです。他に明らかな原因がない限り、お医者さんなども歳のせいかもしれません、とおっしゃることも多いのかもしれません。

しかし本当にそうでしょうか? もちろん年齢を重ねるということが怪我や痛みの原因の一因になることは否めません。しかし、それはあくまで一因でしかありません。歳をとってもそのような悩みとは無縁の方も多くいらっしゃいます。私の最高齢のクライエントは96 歳でしたが、肺炎で亡くなる直前まで特に痛みなど訴えることなく歩き回っていました。ではこの様な歳をとってもピンピンしている人と、怪我や痛みに悩まされてしまう人の差はどこから生まれてくるのでしょうか? 

 私はその差は自分の体に耳を傾け、自分の体を理解し、それに応じた生活パターンやエクササイズなどのバランスをうまくとって生活しているかどうかだと考えています。

  ご存知の通り、筋肉や関節といった人間の組織は細胞から作られていて、新陳代謝と呼ばれる組織の生まれ変わりを繰り返しています。組織によってその代謝のサイクル期間は違い、例えば皮膚などは1 ヶ月ぐらいで新しい組織に常に生まれ変わりを繰り返しています。ですので、 たとえ切り傷や紫外線ダメージがあったとしても治癒する能力があるのです。

負荷が回復能力内の場合、正常な組織であればなんの問題もなく回復し機能を保つことができますが、負荷が回復能力以上であったり、または回復する前にさらなる負荷をかけてしまうと負荷が蓄積されていき、やがて組織が耐えられなくなり回復能力を失い怪我に繋がります。また、運動不足などによりうっ血や組織の停滞などがあると代謝が滞り正常に回復する機能が低下してしま いますので、負荷の蓄積が早まってしまいます。

 私は 損傷、回復、損傷の蓄積、その時間軸をグラフ1、グラフ2 の様に考えています。バランスよく損傷と組織回復が保てればグラフ1 の様にダメージの蓄積がなく正常な組織を保てますよね。しかしグラフ2 のように回復能力が落ちていたり、回復能力以上の損傷が繰り返されたりするとダメージが蓄積されていってどこかで怪我につながります。ここでいう損傷は座りっぱなしで肩、首、腰に負担をかけたり、立ちっぱなしで膝股関節に負担をかけたりといったことでも起きますし、逆に無理な運動などでも起こります。

 グラフ1:組織損傷に対して正常な回復をし、損傷の蓄積が無いケース
 グラフ2:組織損傷に対して 回復が間に合わず損傷が蓄積されていき怪我に繋がるケース

  歳をとってから起こる怪我や痛みの多くは、こうした若い時からの負荷の蓄積、そして組織の停滞による回復能力の低下などが主原因であると考えています。

 例えばアキレス腱を切ってしまった40 代の患者さんを例にお話ししましょう。本来であればアキレス腱は自動車一台吊れるぐらいの強度があります。それが水たまりをちょっと飛び越えようとしただけで切れてしまったそうです。これは生活習慣や食生活によって新陳代謝が低下し、組織回復能力が弱まり、少しずつダメージが蓄積され、コラーゲン繊維が弱くなっていったからと考えられ、そのようなアキレス腱はちょっとしたことで切れてしまうのです。ただこれは決して「歳」のせいではありません。アキレス腱が切れそうなほど弱っているかどうかは触診するとわかりますが、80 歳でも健康的なアキレス腱を持っている方もいれば30 代でも切れてしまいそうなアキレス腱組織の方もいます。

  では何が違うのでしょうか? 次回は組織疲労と回復の個人差の理由とその対策について考えていきたいと思います。

次回へつづく

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